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【暇潰し】R18/Short Story【進撃】

第1章 Ⅰ*エルヴィン・スミス


「よ…すまねぇが…」

彼は珍しく言いよどんだ。
無理もない。

『…そう、…決めたのね?』
「あぁ…俺はあいつを…」

一番生存率の高い彼に、彼は残酷な選択を託した。

『…彼の我侭に最後まで付き合ってくれてありがとう、リヴァイ』

リヴァイは小さな箱を握りしめている。
彼と同じ金髪の、とても聡い少年に巨人の力を与えると決めたようだ。

『少しだけ…2人にさせて』

何年も空き家になっている、誰かの家の誰かのベッドに彼を寝かせた。

ひどく穏やかな寝顔をしている。

縋り付いても泣いてみても、抱きしめる腕も身体ももう二度とは動かない。

愛を伝えてみても、名前を呼ぶ声も愛を囁く声も二度と伝えてはくれない。

『愛してる…、私をおいていかないで…エルヴィン』

彼は残酷な悪夢から解放された。
残酷な世界に私を残して。





―pipipipipi


『…はぁ、…またこの夢』
 

彼女は10歳を過ぎた頃から変な夢に悩まされてきた。
高い壁の中で過ごす日々は、突如として奪われてしまう。
家族を失って、兵士になって、壁の外で化物と戦って、そして彼に愛されて彼女もまた彼を愛した。

最近はこの物語の最終回のラストシーンばかり繰り返し見せられている。
彼を亡くして、耐えがたい悲しみに嗚咽する。
そして目を覚ませば、涙はとめどなく溢れていて、本当に愛した人を失くしてしまった錯覚に陥ってしまう。

夢の中にはエルヴィンとリヴァイとハンジ、その他にも大勢の人と出会いと別れを繰り返した。
彼らのことは、目覚めたあとも顔も名前も忘れる事はなかった。




この夢を見続けたせいか彼女は恋愛をしたことがなかった。
正確にはできなかった。
愛しぬいて愛され尽くした思いは、彼女の心の深層部分に焼き付いていた。

そんな彼女も齢25になる。
いくら世の中が晩婚化の流れとは言え、いまだ男性との経験すらないのはいかがなものか。

決して、縁がなかったわけでもない。
幾人もの男性が思いを告げては、見事に玉砕されてきた。
それほどまでに彼女は美しかった。

悲しいことに夢の中の彼、エルヴィン・スミス以外の男性には興味が持てなかった。
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