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つよがり いいわけ かわいい子【HQ】

第1章 つよがり いいわけ かわいい子



「……3年付き合ってた彼氏と別れた。それも隣には可愛らしい女の子がいて、お前は1人で大丈夫そう、この子は俺がいないとダメなんだ、だって。」



ほんの数ヶ月前、年度末で忙しい中の彼からの呼び出しに仕事を放って定時で上がり待ち合わせの駅前のファミレスに駆け込んだ。
久しぶりの逢瀬だからとロッカーに放り込みっぱなしの綺麗めのパンプスと、急なデートにも対応できるようにとロッカーにかけっぱなしになっていた清楚めのワンピースを身につける。急いで化粧を直し最近の疲れを覆い隠したはずなのに、いざファミレスに入れば待っていたのは気まずい顔と対象の華やかな可愛らしい笑顔。

「…誰。」

仕事だと放っておいた私が悪い。
彼からも連絡が少なくなった。
だから別れ自体はしょうがない。

でも、それはないよ。

「あのさ、俺、お前と別れてこの子と付き合いたい。」

机の向こうの温かな空気とは反面、こちらは冷水を浴びせられたような感覚。
その子を連れてくるってことは、とっくにその子と付き合っているんでしょ。
私なんてもう用済みなんでしょう。

机に置かれた水を飲んで一息吐き"元"彼氏を見れば眉根にギュッと皺が寄る。

「だってお前さ、仕事仕事で今月会える時間あったか。もうそれって付き合ってるって言えないじゃん。」
「俺と会えないことだって気にしてないんじゃねえの。」
「お前ってさ、強いから1人でも大丈夫だろ。」
「この子は俺がいないと駄目なんだ。わかってくれよ。」

忙しいことってそんなに悪いことなの。
仕事をこなすことって悪いこと。
会いたかったよ。
だから無理やり時間作って飛んできたんだよ。
今日会えたら残してしまった仕事も明日から頑張れるって、そう思ったから…

「わかった。」

私が口を開くと2人が安堵したような表情に変わる。
鞄から取り出したキーケースから1つ鍵を外して差し出すと、私は席を立った。

「家に置きっぱなしの荷物はいらないから捨てておいて、さよなら。」

立ち上がり、店を出る。
ゆっくり歩いていたはずなのに、いつの間にか早くなるヒールが地面を鳴らす音。
悔しくて急いでその場を離れたかった。

涙は、出なかった。

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