第9章 9
「どうしたの?なんか上の空だね?」
放課後光くんの仕事終わりにドライブをしていたらそんな事を言われた
(はい)と渡されたホットコーヒーの蓋を外してフーフーと息を吹きかける
「………あのね、光くん」
「うん」
「この前の返事なんだけど」
言いながらギュッとカップを持つ
「私ね?好きな人がいる、の。……でもそれは光くんじゃなくて」
「知ってたよ」
ふと光くんを見ると優しく微笑んでいた
「好きな人だからね。なんとなくわかってたよ」
「それなら、、、、なんでいつも優しいの?……私、光くんの気持ちに応えられてないのに」
「俺が……優しい?」
一瞬ギラっと目つきが変わった気がした
「俺は全然優しくないよ?だって今だってゆりちゃんの悩んでる姿に付け入ろうとしてるんだから」
ヘラっと笑う光くんは私の頭にポンっと手を乗せる
「でも、ゆりちゃんからその話をしてきたってことは俺への気持ちは遠のいちゃったかな?」
そのまま髪をひと掬いした
光くんと居ると安心する
でも、それは恋愛の意味ではない気がする
快斗とも安心する
そしてドキドキする
この気持ちははっきりしてしまった今
私は光くんとは一緒にいる事はもう出来ない
「光くん、、私、、、もう一緒にはいれない。ごめんなさい」
好きだった
友達として
先輩として
お兄ちゃんとして
一緒に居たいというのは我儘だから、さよならすることにした