第9章 慶/安いもんだ＊坂田銀時＊

……言ったね。ああ、言ったわ。






一週間前ー。






「いや、あの…な？銀さんも育ち盛りっつーか？寝坊って言うと聞こえは悪いけど銀さんの成長のために必要な？的な？やー、春って睡眠に誘われちゃうよね〜。マジで困るわ。」

『……別に気にしてないよ』








その日はチャンのプリンを勝手に食べた償いとしてと出かける約束をしていた。…があろうことか俺は寝坊をした。結局予定は全部変更。一日中万事屋で過ごすことになった。ファッション雑誌を眺めながらそうは言ったが、気にしてないわけがない。怒ってるよな、怒ってるよな！？なんて俺としては冷や汗ダラダラだ。








約束がどうでもよかったわけじゃねぇよ？俺が言うと顰蹙(ひんしゅく)を買いそうだが、むしろ楽しみにしてたぐらいだ。ただ、ただ純粋に忘れてた。

そう、頭から抜け落ちていたんだ。まるで脂ぎったテカテカのオッさんの頭から毛がハラリと落ちるように。しょうがねぇだろ！？あれって抜けたくて抜けてるんじゃねぇんだよ！むしろ精一杯落ちまいと頑張ってるんだよ！！でも抜けるんだよ！！









『怒ってないって。いつまでもソファの上に正座するのやめたら？』

「…………。」

辛辣ゥウゥウウウ！！いつもよりも棘があるよ、チャン！！！

やべーよ、すんげー怒ってんじゃん。なんかチャンが機嫌直してくれる事ってあるか！？ここは……全ての人の心を掴むジャンプしかねぇだろ！な！？いやー、今週のONE PIECEとか本気でおもしれぇよ。ONE PIECEの話題をぶっこめばチャンの機嫌も右肩上がり間違いなし！！





「今週のONE PIECEおもしろいよな〜。銀さんビビったわ。メラメラの実とか出てくんだもんな。誰が食うかな！？麦わらの一味はねぇと思うんだけどチャンどうよ？」

『……私、まだ読んでないんだけど』

「は、」

『もう…！銀ちゃん知らない！』


や………、
やっちまったぁあああ！！！
機嫌直すどころか知らないって言われたぁあああ！！
どうするよ、俺！てかもうどうしようもなくね！？喋ったら喋っただけチャン怒らせてね！？諦める前から既に試合終了じゃねぇ！？どうすればいいんだ安西先生！！