第16章 IH予選 初日
私が荷物置き場の近くに辿り着くと、既にみんなはそこにいた。
「すごかったなァ、烏野」
「とくにあの小さい10番にはビビった!」
「あー、だよなー!」
「速攻、すげえ決まってたもんな」
通りすがりの人がそんなことを話していて、私はニヤニヤと口元が緩んでしまった。
「あっ!鈴木!」
「勝ったぞー!」
『お疲れ様でした!みなさん、かっこよかったです!』
「なははっ!そうだろうそうだろう」
「鈴木さん、なんか青城の人みたいになってた!俺たちのマネージャーなのに!」
「たしかに、キミどうして青城従えてたの?」
『従えてなんか!…あの、色々気遣ってくれて』
「大王様さぁ、すげえ鈴木さんに近いんだよな…!影山も見たろ?」
「いや」
「は?」
「見てねえ。そんなことより鈴木さん、スコア」
『はい』
飛雄は私のスコアを手にすると、その場でじっと見始めた。
「ほんっと影山くんってば、こういうとこある!」
『あはは…』
飛雄は試合中、本当に一瞬たりとも観客席に目線をやらない。1回戦だからとか決勝戦だからとか、相手が弱いとか強いとかも関係ない。いつだって全力で、本気。
そりゃ中学の3年間、私が会場にいたことに気がつかないわけだよね。