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【HQ/R18】きっかけは赤、はじまったのはラヴロマンス

第2章 近づいた距離



大丈夫というなら。といった感じで佐久早はの小さな手を取った。彼の手は温かく、少しかさついていて、そして大きい。掌にマジックが滑るのが擽ったくて、でも笑わない様に唇を噛み締める。
その時、佐久早の隣でサインを書いていた宮が珍しいものを見たと言う様な表情でこちらをみているのに気がついた。
宮と目が合う。彼はにこりと笑顔を浮かべると、すぐに自分のファンへと視線を戻した。
何だったんだろう。とは疑問に思うが、佐久早の「書けました」という声でその疑問はすぐに飛んでいってしまった。

「ありがとうございます!」

「はい。あの……」

「何でしょう?」

「いえ……。また」

「!はい、また」

何ともぎこちない会話だ。
きっと有村が近くにいれば「何その中学生みたいな会話」と笑うかもしれない。しかしにはそれで十分であった。彼のサインが書かれた右手を大事に握りしめ列から外れる。
そして人が少なくなった所で握りしめた手を開いてサインを見た。サインというのは読めない様なものが多い中、佐久早のサインは『佐久早聖臣』とシンプルなもので、それが何とも彼らしく思わず笑ってしまう。
そして彼の名前の下に、数字が書いてあるのに気づいた。
080からはじまるそれに、の心臓は驚きのあまり一瞬止まった様な感覚に陥る。

これはもしかして。もしかするのでは?

瞬間、は走り出した。
この自分一人では抱えきれない出来事を早く友人と共有したかった。
顔に熱が集まる。心臓はまるで中で小人が太鼓を叩いているかの様にうるさい。


は佐久早聖臣に恋をした。





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