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依々恋々 -Another story-

第8章 Dolce~Side BLACK



化粧室でメイクと髪を整え、彼が待つ席に戻る。

今日は芍薬がお休みで、T.O.G近くのトラットリアに入った。

少し混み合っている店内、一番端の二人がけの席。

こちらに背を向けている赤い髪と、机の傍らに立つパティシエールユニフォーム。
彼女にメニューを渡す横顔は笑っている。

彼女が引くのを待って席につくと、ポルケッタを口にする彼に視線を刺す。

「どうした」
グラスを持つ彼。

一人のウエイトレスが、近くの席に料理を運んだ。
目線を上げたシャンクスと目が合うと、頷いて笑い合う。

「ナンパでもしたの?」

アヒージョのエビを食べ、彼が置いた、まだ半分も飲んでいないワインのグラスを取る。
あまり飲めずに咽るジウからグラスを奪い取ると、何やってるんだ、と水を差し出すシャンクス。


「おまたせしました」
喉のひりつきが落ち着いた頃、料理が運ばれてきた。
「ドルチェ・ミストでございます」
コト、と置かれたデザートにしては大きめの皿と紅茶のカップ。
ありがとう、と笑顔のシャンクスと会釈して空いた皿を持っていくウエイトレス。

一口サイズのガトーショコラとベイクドチーズケーキ。
カッサータには赤いソース。ココットにクレームブリュレ、ハートのグラスにオレンジソースのパンナコッタ。
こんなに魅力的な一皿がメニューあっただろうか、と瞬く。

顔をあげると、グラス片手にニッ、と白い歯を見せて笑うシャンクス。
「随分悩んでたみたいだからな」
時間稼ぎに席を立ったろう、と見透かされ、顔が熱くなる。
少しずつ盛られたそれらから、どれにしようかさんざん悩んで決めきれずにいたのを見抜かれていた。

「盛り合わせなんてなかった」
「見落としたんだろ」
ジウが飲みきれなかったワインを飲み干す彼と皿を見比べる。
「頂きます」
行き先に迷っているデザートフォークの先に笑みを濃くしたシャンクスは、ウエイターを呼び寄せ、食後のコーヒーとストレートの紅茶を頼む。

甘く、冷たいデザートとそれによく合う紅茶。
ほう、とため息が出ると、向かいのブルー・グレイが優しく細められた。
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