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依々恋々 -Another story-

第2章 小さなふたり



いつものスーパー。
「あ、ヨーグルト」
隣から伸びた手によって陳列棚へ戻される。

「嫌がらせかっ」
戻された理由に気づいて、そんなつもりじゃなかった、と隣のアロエ入りを手に取る。
「そんなにブルーベリー嫌い?」
「噛んだ時にゾワッとする」
感覚を思い出したのか、隣でかごを持つシャンクスがいいっ!っと肩を竦める。

「ジャムとかもだめ?」
「思い出すから極力避けたい」
覚えとくね、とかごを持つ逆の手に指を絡めると、ん、と頷いて握り返してくれる。

「ジウは、酸味がだめだったんだったか」
「レモンとかは好きなんだけど、梅干しとか酸味の強い酢の物とか苦手」
「よし、梅干し買い占めるか」
「子供みたいな仕返ししないの」

彼に擦り寄って絡めた指先に力を込める。
横顔を見上げると、少し、覗き込む。
「ごめんね?」
「...お前、ちょっと俺の扱いに慣れてきてるな」
そう?と笑って、買い忘れがないか籠の中を確認する。
くそー、と悔しそうにする姿がなんだか可愛くてクスクスと笑っていると、腕を強く引かれる。

「あっ、」
ギュッと片腕で抱き締められて、塩辛い海の香りと微かにコーヒーが混ざった紫煙の香りを真近に吸う。
「やっ!ちょっと、」
「罰として」「んっ」
微かな声量で話すから、殆ど吐息で耳元を擽る。
「帰ったら覚えとけよ」「ひゃっ」
ぺろ、と濡れた温かい感触が耳先を掠ってビクッと震える。

もう、と見上げると彼はなぜか少し向こうに目線をやって、シーと口元に人差し指を立てている。
何してるの、と振り返ると、奥の飲み物が並ぶコーナーに二人の小さな影。
こちらを見ながら「らぶらぶしてるー」と言った弟らしき小さな影の手を引きながら「みちゃだめだよー。じゃましちゃだめー」と、女の子。

「おじちゃん、シーって言ったから、シーだよ?わかった?ママにも言っちゃだめだよ?」

弟に言い聞かせて去っていった女の子の言葉に、シャンクスは項垂れた。
「そうだよなぁ、あの年から見たらもうおじちゃんだよな」
ハァ、とため息をつく横で、見られたのはよろしくないけれどよく言った、と心中で二人を褒めた。

サッカー台で荷物を詰めていると、隣りにいたシャンクスが笑顔で手を振る。視線の先には、さっきのきょうだいとその母親らしき人。シー、と二人で人差し指を立てていた。


 END
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