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依々恋々 -Another story-

第1章 イタズラ×イタズラ



テレビ前のローテーブルで、ぱら、と今年のスケジュール帳を開く。
平日の枠には、会議や審議会など仕事の予定ばかり。
数ヶ月めくると、やっと直近の連休にサナと行った旅行の予定が赤日に緑で記されている。

スケジュール用にしている多色ペンを手にして、仕事、プライベートと役割をもたせた色のうち「予備」にしていた赤をノックして土曜日の枠の日付に向ける。
【シャンクス】デート、と続けて書こうとして、急に恥ずかしくなって手を止める。
(おでかけ、うん)そう書こう、と気を持ち直してペン先を向けると後ろからスッ、とペンを抜かれた。同時にポタ、と机に垂れた雫。

「あ、」
右手でパラパラ、と捲られて広げられたのはまだなんの予定も書かれていない3月の頁。
平日の9日の枠に左手のペン先が伸びてシャシャっと書かれたのはハートマークと慣れた筆跡による「Shanks」のサイン。

「勝手に書かないの」
「忘れられたら困る」
忘れるわけない、とペンを取り返し、自分と同じ誕生日にちょっとにやけて頁を戻した。
直近の土曜日に書かれた彼の名前に重ねるよう小さめのハートを書くと、後ろで笑う気配がして手帳を閉じる。

見上げると、濡れた髪から肩に掛けられたタオルに雫が垂れている。
その手にはドライヤー。
貸して、と受け取って座る位置を入れ替わり、ローテーブルに肘をつこうとする肩を掴む。

「もう少し下がって」「ん」

少し近づいた後頭部に軽くキスをすると、彼が笑ったのがわかる。
ドライヤーの温度を見て舞い上がる赤髪をわしゃわしゃと揺らす。
擽ったそうに竦められた肩に悪戯心が疼いて、そっと耳の後ろから首筋にかけて指を這わすと、ハ、と少し早い吐息。

乾ききった髪にドライヤーを切ろうとして、向かいのテレビの黒い画面に、目を閉じて少し俯いているシャンクスを見る。
首筋に当てていた温風を少し強くして冷風に切り替える。
「うおっ」
ゾクッとしたのか、首を竦めて閉じていた目を開いて見上げる。
「こ、のいたずら娘が」
緩いルームウエアの裾を捲くって脹脛のあたりを指先でくすぐられる。
「あ、ふっあははっ!ご、ごめんって!ひゃ、許してっ許してくだっさいっ!あははっ」
「あ、今のペナルティな」
「んむっ」

強く唇を押し付けられ、素肌を擽った手に下着を押し上げられた。


 END
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