第17章 これで落ち着くかと思いきや
翌日。私はいつも通りドズル社へ出勤した。今日からドズル社は、来年に向けて色々と変化が起こるようで、各所のスタッフたちは大忙しだった。
そんな中の私も例外ではなく、ファンレターチェック課に手伝いに行っている余裕はなく、ずっと機械やゲームプレイに関する仕事が舞い込んでいてPCと向かい合うばかりだった。
やっと一区切り終わったところで、誰かに声を掛けられた。
「少し、いいですか」
おんさんだった。
私はこれから昼休憩だったので了承し、休憩室に向かうと、おんさんが難しそうな顔をしてこう切り出した。
「ぼんさんのゴミ箱にあったという失敗作のリソースパックのことです」
「ああ、なぜかゴミ箱に入れるとバグるやつの……」
「なぜ分かったのですか? 他でやっても問題はありませんでした」
「あー……それは……」
なんと言ったらいいのか。まさか、ぼんさん宅にロボット掃除機の幽霊がいて、その理由はなんだろうと考えた時に真っ先に思いついたのがゴミ箱だったなんて、言ったところで信じてもらえないだろうし、メカニック課としてはとんでもない発言だ。
「……言えないことですか」
私がだんまりを決め込むと、おんさんは察したかのようにそう言う。おんさんなら悪いことは言わなさそうなのだが、隠し事を言う方だって、相当勇気がいるのだ。
「その、なんというか……ぐ、偶然だったんです」
たまたま見つけたバグだった。私はそう言い繕った。
するとおんさんは目を逸らし、少し間を置いて何か考え事をしたかと思うと、ぱっと私に視線を合わせてこう言ったのだ。
「ベータ版プレイヤーになってくれませんか」
「……え?」
私のこの特殊な能力のおかげで(?)まだまだ忙しい毎日は続きそうである。
おしまい