第3章 九十九折-シャンクス@海賊
「赤髪海賊団が来たぞ〜!」
街を駆け回った報せを迎えるのは、畏怖や警戒ではなく、歓迎と笑顔。
続々と港を集まるのは老若男女。
三本傷のジョリー・ロジャーを掲げたキャラック船に笑顔で手を振る。
隠し入江に船を誘導する漁夫達。
港に押し寄せた人達に手を振ると、わあっ、と声が上がる。
「大頭ー!」
「きゃーっ!ベック〜」
うおー!という野太い声から、きゃらきゃらとした黄色い声まで。
タラップが掛けられると、その突端に人が押し寄せた。
「ベックマン、今夜はうちの店においでよ」
「えー!私のところよね?」
「ヤソップ見て!パチンコ作ったんだっ」
「この前作ってくれた木刀が折れちゃったよ」
「やぁ!ルゥ!船に欲しいものはあるかい?珍しい香辛料を手に入れたんだ」
「ホンゴウさん!以前作ってくれた薬、よーく効いたよ。また、出立までにいくらかもらえるかい?」
押し寄せた人たちが、船の上に現れた影に、笑顔を見せる。
「「「「「大頭〜!」」」」」
タラップを軋ませて降りてきたシャンクスは、ぐるりとあたりを見回す。
やあ、と気さくに声を掛ける村長に、ユニはいるか?と笑顔で問うた。
「最近は、とんと出歩く姿を見てない」
「家に行けば、顔を見せてくれるんだが」
村長の息子である男が、悲しそうに俯く。
「そうか、」
確かに家の方に気配はする、と少し遠くを眺めるシャンクス。
「相変わらず、子どもたちとはよく会ってるみたいだ」
「本人に聞きづらいことがあるなら、子どもたちに聞くほうがいいかもしれん」
「わかった。いつもすまん」
「なに言ってんのさ」
「赤髪のシャンクスの『家族』を任せてもらってるんだ。俺達の、この街の誇りだよ」
✜
チュン、チュン、と小鳥が囀っている。
「そして、海の男達はまた、船を大海原へと漕ぎ出した」
膝の上の本を捲る女。
「『さあ、次の島へ!心躍る冒険を求めて。野郎ども!出港だぁ』赤き龍を掲げたキャラック船が見えなくなるで、港の人たちは手を振る」
指先で読み取る文字を読み上げる。
「その港に海賊の男が愛おしむ女はいなかった。迎えにも、見送りにも来ない寂しさに、男は早足に女の家へと向かった」
突然の明るい声に、振り返った子どもたちが、おかしらー!と駆け出す。
「だー!一斉に来るなっ、バカっ踏んづけるぞ!」
わらわらと群がる子どもたち。