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思いつき短編たち

第2章 満たすもの-スモーカー@海軍


仕事を終わらせて帰路に着く。

G7の宿舎に向いた足を、くるりと反転させた。

軍服のまま向かったのは、食堂。

すでに「close」の札がかかる扉は施錠されていなかった。
取り付けられた鈴が鳴ると、カウンターからヒョコリと顔を出す。

「お勤め、お疲れ様です」
バンダナとエプロンをつけたユニが、お帰りなさい、と笑った。
「お魚とお肉、どちらにします?」
ガタリ、と決して行儀の良い座り方ではない事を咎めもせず、お魚は白身のフライ、お肉はポークチャップです。と水のグラスを置いた。

「あー、どっちが自信作だ?」
どっちもうまそうだが、と聞くと、輪郭に細い指を当てて、うーん、と悩む。
「今日は...フライかな?タルタルがいい感じに仕上がったので」
「なら、フライを貰おうか」
「はーい、お待ち下さいね」


厨房に入った姿を眺めながら、氷の入った水を飲む。

さほど待たずに、お待たせしました!と運ばれてきたトレーには、さすが海軍、と言いたくなるボリュームの白身魚のフライの定食。

「はい、オマケです」
トレーの横に置かれた皿にはポークチャップ。
なにも言わずに手をつけるスモーカー。

「大変そうね、海賊さんの相手は」
ポークチャップのソースをたっぷり絡めた玉ねぎを、大盛り飯に乗せてかきこむ姿に微笑む。
「海賊気取りの若ぇのが、イキって海に出てきやがる。海をナメているとしか思えん」
大ぶりの白身のフライにたっぷりのタルタルをつけてザグリ、と噛むと、また飯をかきこむ。

「そりゃ皆さん、お腹も空きますわ」
ケラケラ笑う彼女の細腕で、ここの3食が賄われているとはにわかには信じがたい。
「ここはゴロツキみてぇな海兵ばかりで、統率も悪いが、唯一良いところは、飯がうまいところだな」
たっぷりの野菜が入ったスープは優しい味で温かい。

「ご飯が美味しくなきゃ、生きていくのも辛くなっちゃうでしょう?」
微笑んだ彼女をチラ、と見る。

「『基地に帰ったらうまい飯腹いっぱい食うんだ!』って思ってもらえたら御の字よ」

ここに配属になってから、きちんと3食食べるようになり、何ならそれが楽しみにもなっている自分は、まんまと彼女にしてやられたのだろうか、と「美味しい?」と嬉しそうに聞いてくる彼女の笑顔に、ああ、とぶっきらぼうに答えた。

                   end
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