第9章 光る星のように
神無を祓った場所に八雲は座り込んだ。
視界がぼやけ出す。
朦朧とする意識の中で、他にやり残したことは無いか考えた。
八雲の頭に浮かんだのは宿儺だった。
やっぱりただの気まぐれだったんだと思い、八雲の胸はキリキリと痛んだ。
(あぁ…そうか。私は宿儺のこと好きになっちゃってたのか…)
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目を開くと何度も来た真っ暗な闇の中。今度はすぐ近くで愛しい人の気配を感じた。
「宿儺。」
「勝手に死におって。」
ふんっと鼻を鳴らして、文句を言う宿儺。
「そうだね。会いには来てくれなかったね。」
「俺がお前に会いに行く理由がない。」
それもそうかと納得すると、八雲はスタスタと宿儺に近づき唇を押し付けた。
「私はもう死んじゃうけど、皆のこと待ってないと行けないの。君が大人しく皆に祓われるって言うなら君の事も待っててあげてもいいよ。」
「ふんっ。小娘が。俺が祓われるわけが無いだろう。」
「そうだね。じゃあ、またね。いつか会えるかな?」
八雲の身体は薄くなっていき、消えた。
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「おい。小僧急げ。」
虎杖は宿儺に言われ木々が生い茂る中をひたすら歩いていた。
「こんなところに何があるんだよ。なぁ。おいってば!…あ。」
宿儺に話しかける虎杖が目にしたのは木にもたれ掛かり、俯いて息を引き取っている八雲だった。
瞳孔が開ききったその目はもう何も映すことは無い。
色のない瞳とは裏腹に、口元には薄く笑みが遺されていた。