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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第1章 純情恋物語編






お智ちゃんを連れ去った連中の根城は、町外れにあった


ソコは周りを鬱蒼とした竹林に覆われた場所で、隠れ家に選ぶのには打ってつけの場所だった



潤之助「………片付いたようですな」


にの江「………えぇ」



潤之助さんは、隠れ家の前に倒れた野郎共の前にしゃがんだ



潤之助「……殺しては居ないようですな……峰打ちしたので御座いましょう」


にの江「……そうですか」


潤之助「しかし、肝心の姫様は何処に居られるのか……雅吉殿も翔吾殿の姿も見えませんし」


にの江「……えぇ」



駆けつけたその場所には、お智ちゃんは疎か、雅吉と翔吾さんの姿すら見当たらなかった



(あのバカ……どこに行ったんだか)



翔吾「にの江さぁあぁあ~~~ん!!」


にの江「……え?」



雅吉のやつ、何処をほっつき歩いてやがるんだろうなんて思っていたら

面白い位に裏返った声に名を呼ばれて振り向いた



にの江「翔吾さん!」


翔吾「にの江…さんっ…!!」



ヨレヨレになりながら走り込んで来た翔吾さんが

あたしの前まで来ると膝に手を突いてぜぃぜぃと息を切らせながら言った



翔吾「…ぜーはー…ま、まさっ…雅吉兄さんの…ぜーはー…言った通りだなぁ…ぜーはー…」


にの江「雅吉の言った通り?どう言うコトだぃ?」



翔吾さんは肩で息をしながら、顔を上げた



翔吾「いえね……雅吉兄さんが…

…どうせ来るなって言っても……にの江は自分達の後を追って来るだろうって…」


潤之助「……で、雅吉殿は何処に居られるのです」


翔吾「にゃ?」



どうやら翔吾さんは、慌てて駆け付けた余り、潤之助さんの姿が目に入って居なかったらしい

急に声を掛けられて、これでもかって位、素っ頓狂な声を出した



潤之助「翔吾殿ですな。

拙者は、智子姫の父君であらせられる殿の家臣、松本潤之助と申す者で御座る」


翔吾「あっ!おおお智ちゃんのおとっつぁん!!」


潤之助「……それは、仮の姿で御座います。

智子姫は…」


翔吾「あたしにとっては、お智ちゃんはお智ちゃんです!」



翔吾さんはふんふん鼻息を荒げながら叫んだ



翔吾「そんな事より、お智ちゃんがお屋敷に連れてかれちまったんですよ!!///」




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