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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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「てぇへんだてぇへんだてぇへんだぁあーっ!!」



もう間もなく四つ時(※午後10時くらいです)になろうって時分に


珍しく家で寝ている雅吉の腕の中でうとうとしていたら


玄関の戸を激しく叩く音と共に、夜遅くなのに威勢の良すぎる声が響いた



にの江「……んん〜……なんだぃ、こんな時分にぃ///」

雅吉「んあぁ〜?……なんでぇ、にの江ぇ……色っぺぇ声出しやがって……もう一回抱いて欲しいのかぃ?」



もぞもぞと布団を被るあたしの声に、半分寝ているみたいな雅吉が、寝ぼけてあたしの着物の裾をたくし上げた



にの江「Σちょっ……馬鹿っ!お止めったらっ!!/////」

雅吉「あぁ〜?」

─ドンドンドン
「雅吉さぁーん!居ねぇんですかいっ!?」



腿の辺りを弄る雅吉の手をペシリとひっ叩くと

また玄関の方から大声が聞こえて雅吉を呼んだ


雅吉はやっとその騒音(笑)に気付いたらしく

目をしばしばさせながら、肘をついて起き上がった



雅吉「なんでぇなんでぇ、うるせぇなぁ………その声は信の字かぁ?」

信吾「あ、雅吉さん!居るんでさぁね!出ましたよ、出たんですよまたっ!!そんでもって見たんでさぁっ!!」

雅吉「ああ?何の話しでぇ?

つうかよ、近所迷惑だから中ぁ入ってから喋れや」



雅吉は渋い顔で笑いながら寝床から這い出すと

懐に手を突っ込んで腹の辺りをボリボリ掻きながら玄関へ向かった




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