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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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若様「今、潤ちゃんが言った通り、わたしは自分のこともあなた達のことも、全く覚えてないある!

言葉使いも、助けてくれた農家のおじさんの話し方がすっかり移ってしまって、なかなか直らないある!

それでも、本当に、本当に…今までわたしがして来た事を、恥ずかしく思っているあるよ…

皆の者さん、本当に申し訳無かったある!!


でも、これから潤ちゃんに言葉を直して貰いながら、今まで悪さをした分をあなた達に返せる様頑張るあるから

どうか、暖かい目で見守って欲しいあるよ!!




潤之助さんの話が終わると

若様は皆の顔を見回して、これまでの自分の行いを詫びた


それを聞いた家臣のお侍たちは、皆一様にわなわなと震え、眼に涙を浮かべた



「わ、若様……若様が、(妙な言葉使いをされておいでだが)とうとう真人間におなりに…!!なんと凛々しいお姿であろう…!!(感涙)」

「(なんか言葉使いが変では御座るが)これぞ、主君の鏡…!!(感涙)」



口々に新生若様(笑)を褒め称えるお侍たち

潤之助さんは、そんな輩を少し複雑そうな顔をして見回しながら言った



潤之助「…まあ、そう言う訳であるから…

これからは、派閥などと戯けた事に気を取られる事無く

記憶を失われた若様を、我ら家臣一同が心をひとつにして、お支え申し上げ参らねばならぬぞ」

「承知致した、松本殿…!!」



先刻まで、殺気立っていたのが嘘の様に、感涙に咽ぶお侍たちが、わらわらと潤之助さんに近づいてその手をはっしと掴む

潤之助さんは、ちょぃと困った顔をしながらも

満足そうに微笑んでいた



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