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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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疼き出した痛みを押し殺して

あたしはコソッと雅吉の着物で溢れ出した涙を拭った



にの江「………なんせね、仲の良い夫婦だから……

……きっと、翔吾さんは、お智ちゃんから聞いてたんだろうね……」

雅吉「仲の良さだったら、俺らだって負けてねぇぜ?」



離れかけたあたしの体を再びギュッと抱き締めて

雅吉がニヤリと笑う


あたしはそんな亭主の腕を払い退けた



にの江「バカをお言いでないよっ!!///」

恋太郎「ばぁお、いーでらいよ!!」

雅吉「あっはっはっはっ、照れるこたねぇだろぅ、にの江よぅ!!(笑)」

恋太郎「にーぇ、おぅ!」

にの江「照れてなんぞいないよ!!

もぅ、鬱陶しいね、お離しっ!!////」


「ごめんください、夜分に失礼致します」



しつこく纏わりつく雅吉と、恋太郎ちゃんを抱いたままで小競り合いしていたら

玄関から知らない男の声がした



にの江「おや、例の馬屋番の息子さんかしらねぇ?

はぁい、どちらさんで?」

「 それがし、大倉先生の門弟の馬屋番の息子で御座います。

万事、手筈が整いました。手前が、御案内申し上げます。 」

にの江「あぁ、やっぱりそうかぃ

ちょいと待っといておくれ!」



あたしは玄関に向かってそう声を掛けると、着物の紐を指差した



にの江「ちょぃと雅吉、その紐を取っておくれょ

恋太郎ちゃんを負ぶって行くから」

雅吉「なんでぇ、にの江!俺以外の男を背中に乗せるつもりか?」

にの江「何バカなコト言ってるんだぃッ!!///」

雅吉「あぃてッ!!」



あたしは相変わらずバカなコトばかり言う、あたしの可愛いぼんくら亭主の頭を

思い切り小突いてやった



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