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🍆だけが襲われる世界で

第8章 渓谷へ


「これ着てなさい」
 俺は上着をスケルタに羽織らせた。上着はそんなに濡れていなかったし、スケルタは嫌がることなくうんと頷いたが、その絵面もマズイ気がした。俺はあまりスケルタを見ないようにし、とにかく溶岩溜まりを見つけないと、と歩き出す。
「あ、ぼん、どこ行くの?」
 落ち着かないのか、スケルタがすぐに追いかけてくる。
「溶岩を探してくるのよ」
「よーがん?」
「そっ、ネザーに行くからね」
「じゃあついてく!」
 格好からして明らかにスケルタの方が寒そうなのだが、それを思わせない程元気な笑顔を見せた。まぁ、止める理由もないか。なんなら溶岩のそばにいる方が服も乾きやすいかもしれないし。
 俺たちはそうして渓谷から繋がっている洞窟へ向かった。洞窟はどこかひんやりしていて、濡れたズボンを大して乾かさなかった俺は思わずクシャミをしてしまった。
「ぼん、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
 大丈夫じゃなくても、そう言って置かないと俺も不安だった。この生身の体で本当にネザーに行っていいのかも分からないし。
「なんかだんだん暑くなってきたな〜」
 歩きながら、スケルタがそう呟いた。
「確かに……」
 俺たちは気を紛らわせるためにそんな言葉を交わす。洞窟の奥にどんとんと進んでいた俺たちの周りは、確かに熱気が漂ってきていたのだ。先程のひんやりとした空気感とはまるで違う。
「あ!」
「何なに?」
「ほら、スケルタ、あれを探してたのよ!」
 俺は眼下の溶岩溜まりを指してスケルタを振り向いた。
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