第8章 違う人と任務
でも、気を利かせてくれたってことなら嬉しいかな。
「寧々ちゃん、いつ転んでも大丈夫だからね。私が支えるから」
「心配しないで、ちゃんと足元を見て歩くわ」
そう言って再び高専への帰路についた。
「寧々!俺の手が塞がってるんだから、絶対に転ぶなよ!?」
「フリなの?」
もう逆フリにしか聞こえないテンションの五条くん。
「もし転ぶなら俺の方に倒れろよ。クッキーを犠牲にしてでも寧々を助ける」
「クッキーの方が大事なのだけれど」
2人が買ってくれた「楽しい思い出」のクッキーだもの。
大切に、大切に食べるわ。
五条くんだけじゃなくて、夏油くんも「楽しい思い出」をくれるのね。
青春なんて真っ平ごめんよ…なんて、思っていた春と違って
過ぎゆく夏は愛おしいほどに「楽しい思い出」で溢れていた。
「次」はどんな素敵な思い出が得られるのかしら、来年はもっと楽しく過ごせるかしら。
はやる気持ちを抑えつつ、隠しつつ、高専までの道を歩いた。
今までで一番、距離が短く感じる。
転ぶことはなかったけど、心は軽快に弾んだ帰り道だった。
夏休み、凄く楽しかったな。