第8章 違う人と任務
「そうね…大股15歩くらい?」
これなら五条くんのところまでも辿り着くでしょう。
「了解。こら、悟。動こうとしない」
夏油くんは一歩80センチはあろうかという大股で、私となまちゃんを通り過ぎた。
そして、ここにきて…またも不正を働こうとする五条くんに近づいていく。
「男に触られても嬉しくねぇよ。でも傑が寧々に触るのもダメだ」
いちいち文句をつける面倒くさい五条くんの目前まで来た夏油くんは
「私だって男に触る趣味はないよ」
そう言ってくるりと踵を返し、
「どうせなら…ね」
私の方へと向き直った。
「えっ」
自分で指定した大股15歩までは、まだ余裕がある。
ずんずんとこちらに戻ってくる夏油くんに、後ろから五条くんが吠えている。
「俺の寧々だからな!?触んなよ!絶対だぞ!」
それはもう逆フリにしか聞こえないようなセリフで、ギャンギャンと騒ぎ立てる。
「……!」
術式を行使するなら、まだ間に合う。
潜在意識に介入して注意を逸らし、標的を五条くんにすげ替える。
呪力も十分残ってる、術式の発動を遮られないようにギリギリまで引き付けて…
「…っ、え?」