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TNTになった俺と傷つかない少女

第8章 TNTになった俺と傷つかない少女8


 ボロボロの倉庫のシャッター前は、すでに眩しいくらい投光されていた。俺は両手を挙げながら、光の中心辺りまで歩いて出た。
「やっと出てきたか、TNT番だな」
 光で姿までは確認出来ないが、これが博士の声だろう。俺は「TNT番って名前じゃない」と言いたくなる気持ちを抑え、そいつの次の言葉を待った。
「ライト、消していい」
 という合図が聞こえ、俺を照らしていた光がぱつぱつと消えた。そこでようやく、博士とやらがよく見えた。いかにもって白衣と眼鏡の男。こいつが悪役か。
「どこでXX番を匿っているのかは分からないが……」悪役博士がデカそうな態度をしたまま話し続けた。「やつの能力はこの街を未来永劫大きく発展させるのに必ず役立つ被検体だ。大人しく私に返せば、何も危害は加えない」
「渡したところで俺に得はないんだが?」
「安心したまえ。君の元いた世界へと必ず安全に帰れるようにしてやる」
 出た出た、必ずってやたら使う悪役。漫画も映画も、それに従っていい結末を迎えた試しがないんだよなぁ。
「元いた世界ってどういうことだよ?」
 そんな気はしていたんだが、と思いながらも俺が問いただせば、悪役博士はつらつらと、TNTになった俺を異世界から発見してこちらの世界に引き込んだ、と話した。聞いたところ嘘はないようだが、俺とミウがいたところが他に誰もいなかった理由が分からない。俺はさらに質問を重ねた。
「俺たちがいたところはなんだったんだ」
「あー、あそこはね、ちょっとした失敗をしてね」悪役博士は随分と楽しそうに話した。「君は、自分がちょっとした衝撃で爆発することは知っているだろう? 君を転送機でこちらに連れてきた瞬間、爆発してね。あそこにあった研究所はほとんど壊滅したのだよ」
「なのに随分楽しそうに話すなぁ?」
「なぁに、科学に失敗はつきものさ。それより、君という大きなものを手に入れたのだから」
 それから悪役博士は、部下に指示してXX番──ミウと同じ部屋に閉じ込めたらしい。その時悪役博士は遠出していたらしいので、こうして会うのが遅れてしまった、と語った。
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