第7章 TNTになった俺と傷つかない少女7
「なぁに?」
ミウはいつも通りの口調で聞き返してきた。俺はミウにこう質問をした。
「ミウのパパとママはどこにいる?」
「お家!」
なんとなくそう返事されると思っていたが、ミウの言う通りだ。俺はそうかと頷き、言い方を変えてみた。
「ミウのお家はどこにある?」
「えーっとねぇ、お花がたくさんあるの!」
花、か。
一応新たな情報は得られたが、これ以上の模索は難しいようだった。近所には犬がいたとか、よく晴れていたとか、転々と話が変わるばかりで埒(ラチ)が明かない。
俺の家に連れて帰ってもいいが、ここがどこかも分からない。というかこの状況、俺が誘拐犯になりそうなんだが、自販機を破壊させた教唆犯(きょうさはん)という罪を背負っているのだから、同じものか。
つまり俺たちは、可哀想な逃亡者。
ならこんなところにいつまでもいるのは危険だろう。せめてミウがぐっすり眠れるところが見つかるといいんだが、この状況でそんなものが見つかるとは思えない。
「そこにいるんだろう、出てきなさい」
突然、声が飛んできた。恐らく拡声器を通して喋っているだろう声が、シャッター越しから聞こえてきた。途端に、ミウが怯えて俺に体をくっつけてきた。
「怖い……」
と呟きながら。
聞かなくても、それが博士の声だということはなんとなく察した。
「ここで待ってろ」
「やだ!」
「話してくるだけだから……」
それでも一歩も譲る気はないと、ミウは俺の手を離さない。俺は少し考え、こう言った。
「無事に色々終わったら、肩車してやる」
「ほんと?」
「ああ」俺にしては酷い約束をしたもんだと思った。「いい子にしてろよ」
「うん!」
ミウの手が俺の腕から解けるように離れていく。それがちょっと名残惜しいなんて思ったら、泣けてしまいそうだから何も考えないようにした。
俺はボロボロのシャッターを持ち上げ、外にいるだろう拡声器の男と対面した。