第1章 眠り姫
「…主」
「な、なに…?」
いつになく真剣で強い日光の眼差しが、こちらに向けられている。
日光は主が持っているグラスを取り上げて、お盆に置く。
その強い眼差しにたじろいで、視線を逸らす。
「…………っ」
日光の口から何が飛び出てくるのか分からなくて、心臓の鼓動が緊張と不安で速くなる。
主としての振る舞いが未熟だとか、まだまだ詰めが甘いとか。
容赦ない駄目出しをされるのだろうか。
不安で手が震えてきてしまった。
「…そんなに大事なこと?」
「ああ、大事なこと…だな」
大事な話だと聞き、主は恐る恐る視線を戻した。
2人きりの時でないと言えないのは、山鳥毛達には聞かれたくないからか。
でも今、日光に否定的な事を言われたらきっと立ち直れない。
明日以降、仕事が出来るか分からない。
「…主、俺は」