第10章 過ぎた恋の話し
松岡さんは、僕が何処にも行かないように
僕に部屋を借りて其処に住まわせた
必要なモノは、何だって買い与えてくれた
ただ
その代わり、僕に、極力外出しないコトを命じた
「妻とちゃんと話がつくまで」
松岡さんは、そう言って
僕の自由を奪った
外出して食事をするのも
決まってこのレストラン
他の人の目には、決して晒されない密室で
二人キリで食事をするだけ
それでも
僕は…幸せだった
愛する人に愛されて
…求められて
それだけで、幸せだった
だから
色んな矛盾に目を瞑って
解らない振りをして
彼の愛に溺れていた
……でも
「………“別れた”から、じゃなくて……また、“別れる”から、なんだね」
「………え?」
「ねぇ、気付いてないの?
……松岡さん、あの時と同じ事言ってる」