第8章 因果呪縛を解く
伽那夛が何よりも強い違和感を覚えたのは悟の表情だ。
いつもの軽々しい顔からかけ離れ、こちらを見ているようで見ていない、もっと遠くの何かを見ているような、しかし眼光はまるで獲物を狙う獣のようにギラギラと輝いている。
どこか恐ろしささえ感じる姿に怯む己を叱咤し、伽那夛は問い返した。
「っ、……それはこちらの台詞よ。どうしてここに来たの?その血は何?」
「俺が聞いてんだけど?それとも何、答えられねぇこと?」
いつもより静かな声だというのに、いつもの何倍も威圧感を感じる。
伽那夛はすくみそうになる心を落ち着かせようと一呼吸してから答えた。
「……昨日から羽田空港に星漿体狙いの呪詛師が集まっていて、その呪詛師達から聞き出した情報から盤星教が怪しいとなったのよ。私がここに来たのは盤星教の誰が呪詛師を雇ったのか調査するため」
「ふうん、オマエが殺されてないってことはアイツはここにはいねぇか」
「アイツって誰よ?」
「オマエには関係ねぇよ」
言っても無駄という態度にカチンとくるが、伽那夛も伽那夛で知らないという態度を装っているため、怒りは飲み込む。
アイツって、多分甚爾のことよね、
ここに呼び戻さなくて正解だったわ。
さして興味もなさそうにしている悟を前に少しでも早く、そしてそれを悟られないように話題を逸らす。
「あなたこそ、護衛任務は終わったの?その格好だと相当苦戦したのかしら?」
「あー、護衛任務ね……オマエに言っとくのがちょうどいいか。俺、しばらく消えるから」
「……なぜ?」
「天内は同化しない」
「それは彼女の意思?」
「ああ、同化せずに生きる道を選んだ。俺は傑と同行する。まぁ、護衛の延長だな」