第8章 因果呪縛を解く
「……そんなんで引き下がったのか?」
『今の星漿体は同化に乗り気じゃねぇ、絶対に拒むし、呪術界が追い回そうと五条悟が護衛につくから手出しできない、だから生かしておけば天元と同化することはない……あー、それと星漿体を保護するんなら他の特級術師とも協力できるとも言って押し切ったらしい。営業妨害も甚だしいぜ』
孔の深いため息が聞こえてきたと思ったら、伽那夛が割り込んできた。
『あなた、孔に私のことを見張らせていたでしょう?痕跡を残さないあなたより孔の方がずっと張りやすかったわ。あ、五条家には明かしていないからそこは安心して』
「いつから嗅ぎ回ってた?」
『あなたにこの話を聞いた直後から。かなり色々駆け回ったのよ。間に合わなかったらどうしようかと思ったわ』
事前の情報収集が裏目に出たという訳だ。
ある程度文句を言われるのは予想できていたが、ここまでやられたのは甚爾の想定外だった。
『これであなたは完全にタダ働きね?』
「オマエの理論、もう成立しねぇぞ。五条悟殺しちまった」
『は?……え、なんて?』
「だから殺したんだよ。喉から胸、腹掻っ捌いて眉間をブチ抜いた」
そう言っても伽那夛は信じていないようだ。
『……どういうこと?悟、無下限呪術使ってなかったの?』
「そんな緩かったらもうとっくに星漿体も殺してんぞ」
『ちょ、全然信じられないんだけど、本当に死んだの?』
「なんなら高専来てみろ、死体あるから」
『ま、まぁそれは盤星教に言わなければ問題ないでしょ。もう1人特級術師の協力も取り付けているし』
「すぐバレるぞ」
『でも取り下げは取り下げだから、タダ働きに変わりはないわ。今から星漿体を殺しても無意味』
どこか得意げに喋る伽那夛にこめかみを押さえていると、電話口から「あ、」と何か思い出したような声を上がった。
『盤星教には戻ってこなくていいわよ、術師が調査に入るだろうし。私もしばらくあなたには会わないわ』
見事にしてやられた。
これ以上進んでも一銭にもならない甚爾は舌打ちして来た道を引き返した。