第8章 因果呪縛を解く
しかし、
「あら、ずいぶん安物を使っているのね」
「あ?」
まだ距離が数メートル離れているというのに男の手から手斧が抜け、伽那夛の手に収まっていた。
大した呪力も帯びていない手斧は造りも手入れも粗雑だと一目で分かる。
一通り眺めた後、おもむろにそれを投げ返す。
動作だけ見ればボールを投げ渡すかのように軽やかなものだが……
「ぎゃあッ!?」
伽那夛の手を離れた瞬間、急に加速して飛んだ手斧は茶髪男の右肩に深々と突き刺さり、激痛に倒れた。
痛みに身を捩るほど傷口から血が広がっていく。
「言ったでしょう?痛い目を見たくなければって」
伽那夛は軽く肩をすくめる。
「テメェ、何しやがった!?」
「見ての通り、呪具を返しただけよ。受け止め損ねてしまったようだけど」
「違ぇよ、その前だ!なんでテメェの手に斧が飛んでいった?」
「ああ、それは私の術式よ。磁場操術といってね、任意の場所に磁場を発生させることができるの。さっきのは呪具と私自身に磁場を形成して引き寄せたのよ」
逆に手斧を返した時は投げる際に磁場を切り替え、反発させて飛ばした。
術式範囲内であれば任意の強度、範囲の磁場を自在に形成できる磁場操術。
戦闘では主に金属製の物に対して引き寄せる・反発させるを切り替えて使うことくらいしかできないが、伽那夛の呪力特性ならこの術式を更に強化できる。