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山鳥と雛鳥

第19章 彼が来た理由


何事もなくて良かった。

雛鳥はどうやら眠っているだけだった。


「お客さんも、風邪ひかないように…」

店主は薄めの毛布を2枚持ってきてくれたが、私はそれを雛鳥にかけてやって欲しいと頼んだ。

「随分、あの子のこと気にかけてくれてるんですね。」

「……。」

私は店主の言葉にどう返せばいいか分からなくて黙ったままサングラスをかけ直した。
いつの間にか眠ってしまい、起きると目の前に雛鳥がいた。

ズレたサングラスをかけ直そうとしたがそこになく、雛鳥が外していたらしい。



山鳥毛



雛鳥が…私の名を?

雛鳥はなにも答えられない私の代わりに気持ちを吐いていた。

「小鳥の愛娘である雛鳥を見守っていくうちに、子を思う親鳥では無い愛情に気づいてしまったんだ。
私と雛鳥では、生きる世界があまりにも違う。
これ以上、傍にいては奪いたくなってしまうことを私が恐れたんだ。」

獣になってしまうだろうと、恋焦がれた私に雛鳥はさぞ軽蔑するだろう。

雛鳥はスっと立ち上がった。

「山鳥毛…私の家に来て…。」

雛鳥は店主に一言告げると真っ直ぐ家路を歩いた。
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