第2章 キミを探しに。
「当り前でしょう?ボクはソングロボ。うまく歌えなかったら存在する意味がない」
藍はもらった楽譜をポケットにしまいこみながら、皐月に一歩近づいた。
反射的に皐月も一歩下がるが、危険がないと分かった瞬間、元の位置に戻った。そんな少しの心に造られた隙が藍には嬉しくて仕方がなかった。
「それは当然でしょう?それより、私、作曲家になるわ」
自信下に金色の髪をふわりと揺らし、蒼い瞳で藍をグッと強く見た。
自分が思っていたことを皐月に先に言われ、藍は思わず、目を見開いて皐月を見て言った。
「キミも、その気だったの?」
「当り前でしょう?瑠璃川の家につかまるのは二度とごめんよ。だから美風専属の作曲家になれば、
美風が守ってくれるんでしょう?」
瑠璃川家のお嬢様なのにフンッと品のない声を出し、藍から顔をそむけた皐月を、藍は思わず抱きしめた。
「なっ、何よっ!!」
ただ抱きしめたかっただけではない。いつも強気で、人に頼らない強い少女がロボットの自分を頼るなんて、嬉しくてうれしくてしょうがなかったからだ。
「・・・大丈夫、作曲家になって。ボクがキミを守るから」
このとき、藍は決断していた。小さいながらも、たくさんのものを背負っているこの背中を、自分が守る。周りの、汚い大人たちから守る。
「・・・この私が言ったのだから、当然よ」
藍はまたぎゅっと小さな体を抱きしめた。