第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
「少し待っていろ。暖かくしてくるから」
ひなたに囁くように優しく言ってから、ひなたの腕をそっと離す。ひなたは何か小さく呟いていたが、聞き取れない程に小さな声だったので、杏寿郎は起き上がり薪を焚べに行った。
小さかった炎が徐々に大きく育っていく。囲炉裏から広がった明るい炎の熱と光が、薄暗かった部屋を照らした。
「…俺は……」
小さく呟いて炎を眺めた。なんとも言えない、自分でも説明の仕様のない感覚が胸の中にあった。
この感情が何なのか、よくわからなかった。
また寝床に戻り、ひなたの隣に横になる。無防備な寝顔をこちらに向け眠っているひなたを見ていると、守ってやりたくなるのだ。
…千寿郎を愛しく思う気持ちと、同じだろうか。
それとはまた違う種類の思いなのか。ひなたと同じ家に住むようになり、家族のように感じていたが、何か違う気がした。
「…んん……」
再び杏寿郎の気配を感じたか、ひなたが腕を伸ばして杏寿郎の身体に巻き付ける。
ひなたの胸が杏寿郎の胸にぴたり付き、柔らかな感触がした。杏寿郎は少し身を屈めるとひなたの耳元に唇を寄せてみる。
仄かに桃色の耳たぶの少し上に口付けた。
女子の甘い肌の香りと柔らかな温もりが唇に触れた。
唇を離すと、眠っているにも関わらず、ひなたが嬉しそうに微笑みを浮かべている。
気持ち良さそうに、杏寿郎にすりすり、としてくる。
なんだか可愛い仕草だ。じっと見ていると、ひなたは杏寿郎の胸に顔を埋めて来た。そしてあろうことか、杏寿郎の胸に口付けを始めた。
時折ちゅぱ、と小さな音をさせて杏寿郎の胸を舐め出したひなたに、ビクッとなって止めようとする。が、ひなたは赤ちゃんになった夢でも見ているのか、杏寿郎の乳首や胸周辺を吸ったり舐めたり。
「ひなた、ひなた。やめ…るんだ…」
そういう性癖があるのかは分からないが、杏寿郎の肌から離れないひなたの頭を撫で、名前を呼び起こそうとするも、起きない。
仕方ないので、そのままにして吐息をついた。
…この状況は、困る…。
眠ろうにも、眠れなかった。