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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第10章 恋慕3−1 花の赦し ノーマルEND【家康】


その夜、家康は久しぶりに長めに眠ることができた。

次の日、約束通り光秀から花が届けられた。

光秀だけでなく、他の武将達からも。

部屋は花で埋めつくされ、新鮮で芳しい香りが漂う。

「‥‥ったく、何これ。多すぎだから」

傷の処置をしながら、家康はため息をつく。

その時、名無しが目を開けた。

「名無し‥‥!起きた?」

「‥‥いえやす‥‥」

昨日よりずっと、はっきりと家康の名が聞こえた。

「大丈夫?!痛いところは?!」

「‥‥へいき」

「水飲む?」

「うん‥‥」

きちんと意志疎通できている。

確かな手応えに家康は安堵しながら、彼女の背中を支えて水を飲ませる。

「‥‥ありがとう‥‥」

部屋を見渡した名無しは、

「すごい花‥きれい‥‥」

嬉しそうに微笑む。

もう一輪、他のどんな花より綺麗な花が咲いた。

家康の心に喜びと共に、彼女にした事への罪悪感がどっと押し寄せる。

(今、謝らないと)

「名無し…ごめん。俺のせいだ。名無しに無理矢理…それでこんなことに…」

「……」

「川に…身を投げたの?俺はそれほど苦しめて追い詰めてしまった……」

「違うの…。私はここにいちゃいけないって思って安土城を出た…もう二度と戻らないって決めたの……」

名無しの手が震える。

「それなのに…家康が好きって言ってくれたのが嬉しくて…会えなくなるのがやっぱり辛くて…たまらなくて…そればかり考えてた……。気づいたら足を滑らせて……」

「名無し…」

震える名無しの両手はずいぶん細くなってしまっていて、家康の心はジクジクと痛む。

自分の手で震えごと包み込みたかったけれど憚れた。

あの日、あんなに強引に彼女に触れてしまった事、悔悟の念に苛まれる。

「もう何も心配するな。俺は名無しがいてくれればそれでいい。もう思いを押し付けたりはしない!あんたが信長様のものだっていい!」

真剣な瞳で心から訴える家康。

「…遠くから見てるだけで充分だ。それだけで幸せだ……」

「家康…」

名無しの瞳から涙が零れ落ちる。

「あんたが大事なんだ。安心して、とにかく体を治す事に専念して」

「…ありがとう…」

名無しは頷いた。
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