第31章 歪んだ愛で抱かれる 前編 【三成】R18
輿入れの日は雪
身を包む白無垢も、辺りの景色も真っ白で…
安土城を見上げ、ようやく帰ってこれた安堵感に包まれた名無しはここを離れた日を回想していた。
見知らぬ場所へ行く不安に押しつぶされそうだったが、どこまでも白く美しい景色が門出の日にはぴったりだと、自分で自分を鼓舞したのが随分前に思える。
新しい生活が始まって4ヶ月が経ち、季節は冬から初夏へと移り変わり、こうして戻って来られた安土城を前に様々な思いがこみ上げた。
「名無し様がここを出られた日は雪でしたね」
心の中を見透かされたような言葉に驚いて視線を隣に向けると、三成も安土城を見上げていた。
その横顔に目を奪われる。
天使のよう
立派な青年なのに端整な顔立ちで柔らかい雰囲気をまとう彼にはそんな印象を抱く。
だけど横顔の線は高い鼻やしっかりと形作られた顎が立体的で男らしい。
ドキドキと鼓動が高鳴り、名無しはしばらく目が離せないでいた。