第4章 タイムフライヤー【うちはサスケ】
「ん…っ」
肌を刺す空気の冷たさで目が覚める。おそらく落下時の風圧で失神してしまったのだろう。でも生きてる。なんて丈夫なんだろう自分の身体。
濡れた衣服が肌にくっついて気持ち悪い。そうだ、確か川に落ちて、
「やっと目覚ましやがったか」
「!!」
声の主に、朦朧としていた意識が覚醒する。…結局逃げきれなかった。サクラ師匠さようならです。今度こそ殺される。
「お前の鞄の中身は見させてもらった」
「え」
「なんなんだこれは」
そう言って私に差し出してきたのは
「いやああああああ!」
「…くだらねぇモン挟みやがって、こんな古い写真どこで手に入れやがった」
ピンクのペンで大量のハートが書かれている、それもご丁寧に大好き♡なんて添えてある、あの写真が…。破いてやりたい…。
「ごめんなさいごめんなさい」
恥ずかしくて顔が見れない。怖いのでひたすら謝れば溜息と一緒に「もういい」と一言返された。…アホすぎて呆れられた。
「…お前は」
「…は、はい」
未来の人間なのか、と続けた。驚いて目線を上げる。何故ばれたのかと思考を巡らせれば、サスケさんが手にしている医学書が目に入った。あれは私の…。なるほど…発行日か。
不自然に目をそらせば、肯定の意味として捉えたのか、信じ難いなと独り言のように呟いた。
「…私のこと、殺すんですか?」
恐る恐る聞けば「行い次第だな」と返される。気のせいか、初めの頃と比べると随分と恐怖心が薄れた。彼から戦意が消えたからだろうか。
「お前には聞きたいことが山ほどある」
「……」
「アジトまで付いて来てもらう」
「!?」
へ?…アジト!? そんな所に連れて行かれたら元いた時代に帰れないじゃん!
「…嫌です」
初めて見せた反抗に、サスケさんは私の前でしゃがみこみ、写真を見せつけた。
「俺のこと”大好き”…なんだろ」
「だからそれはもうやめて!!!!」
恥ずかしさのあまり声を荒げる。奪い取ろうとするが、寸前のところでかわされた。気のせいかサスケさんがフッと笑った気が…。くそっ!かっこいいのが腹立つ…。
「さっさと行くぞ」
「…っ!」
タイムフライヤー
穏やかな目をした情に深いサスケさんはどこにもいません。でも変わらないドタイプのお顔にこれ以上反抗できそうにないです。
(いつかに続く)