第3章 n度目の愛の告白【波風ミナト】
「髪の毛短いのもすごく似合ってる」
腰まであった長い髪を鬱陶しいという理由で胸あたりまでバッサリ切れば、目の前のミナトは似合ってる似合ってると何度目だろうか。数えてらんない。お世辞ではないのはちゃんと伝わっているからもうやめてほしい。周りからの視線が痛い。
ありがとうと一言返せばパチリと目が合い、途端に目を細めて眩しいぐらいの笑顔を浮かべる。
「うん、かわいい」
「……」
こいつは恥ずかしげも無くなんでこう易々とかわいいなんて言葉が出てくるのだろうか。タラシなのか!?いやミナトは複数人の女性を口説けるほど器用な男ではない、ただの天然だ。そのくせに精密なチャクラコントロールを必要とする飛雷神の術を難なくこなしてみせるから、これまた不思議だ。
ミナトはアカデミー時代から何も変わっていない。その眩しいぐらいの笑顔も、心も身体も強いところも、そして幼い頃からの夢も、今だってずっとずっと変わらない。
素直で可愛げのあった昔の私は、火影になりたいと大きな夢を掲げていたミナトに「ミナトならきっとなれる。私が側で見守ってあげるからミナトは私のこと守ってね」なんてにっこり笑顔で告げたのが事の発端だ。
火影に守られるなんて、未来の私の命保証されたくね!やったぁ!と呑気にはしゃいでいた私は気づかなかった。ミナトがその言葉をどれほど深く、真剣に捉えていたのかを。私のアカデミーライフが一変したのは次の日からだった。
「ねぇねぇミナトくん!ミナトくんはどんな女の子がタイプなの?」
「ええ気になる気になる!」
お昼の時間に恋愛話が聞こえてきたと思ったら、女の子たちは興味津々な様子でミナトの周りを囲っていた。ミナトはそんな圧力に、満更でもないような顔を浮かべては、んーと真剣に考えている。律儀だなぁ、なんて感心していると、ミナトの口からとんでもない言葉が放たれた。
「ひおりみたいな素直な女の子が、好きかな」
「「!!??」」
え!?と驚いて、その場から勢いよく立ち上がる。ガタンっと教室に響き渡る机の音に、女子はあんなちんちくりんの何が良いんだとでも言いたげな顔で私に視線をやる。
「ほら、ああやってすぐ態度に出るところ」
こっそり盗み聞きしてるところ、かわいいよねとかいって笑うミナトに言葉が出ない。