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綾なす愛色【鬼滅の刃】

第2章 優しい約束、哀しい約束





今日は月曜日
日が傾き始めて、暗くならないうちに私は家を出る
目立たないように風景に同化するように
派手な着物は着ない

夏は日が暮れるのが遅い
明るい時間が長いと言うことは、必然と独りの時間は長くなる
私はあの人のどこが好きなのだろう
どこに惹かれたのだろう

考えれば考えるほど思いつかない
目を瞑って、あの人の顔を思い出そうとする
でも…ぼやけてはっきりと思い出せない
幻想のようなもの

掴もうとしても、手をすり抜けていく


あの人とは、町で出会った
落ちた私の簪を拾ってくれた人

踏んでしまって壊れてしまったから弁償したいと言われた
そんなの安物だし、大して思い入れもない
断っているのに、「いいから」と引き摺られるように小物屋へ行ったっけ

でもいざ小物屋に入れば、煌びやかで可愛くて欲しくなってしまうのが女の性
見るだけと手にとれば、「それがいいのか?」と聞いてくる

結局言われるがまま買ってもらって…
思えばあの時から、あの人に支配されていたのだ

金魚が閉じ込められたようなとんぼ玉がついた簪
それに目を奪われたのは、身動きのとれない孤独の中でもがいている私と
とんぼ玉に閉じ込められた金魚が重なったからかもしれない

「薫によく似合う」

あの人は事あるごとに、簪を褒めた
その度に私は、ここから逃げられないと言われているようで
苦しくなる

あの人が他人のものだと知ったのは、何度か肌を合わせた後のこと
町で見かけたあの人の隣には、綺麗な人と小さな女の子がいた

仲睦まじく手を繋いだりして
家族に向ける笑顔は、私といるときとは違うことが横顔からでもわかった

他人のものはいらない
私は私だけのものが欲しい

でも…
いくら手を伸ばしてもそんなもの手に入らない

「もう会うのやめよ?奥さんいるよね?」

「あぁ。いる…黙っていて悪かった。だがもうそこに愛はない!妻とは別れる。約束する。だからもう会わないなんて言わないでくれ」

なんて模範解答なのだろう
そう言われたら、待つよって言うしかないじゃない

私は大バカ者だ
結局…そばにいてくれるなら誰でも良かったのかもしれない
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