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強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙

第1章 最強の男




私は上の弟、昴流の背中を軽く叩いた。

「いてっ!」

「お姉ちゃんの友達に、そんな口聞かないのっ! ほら、ちゃんと謝って」

諭すと、昴流は小さめの声で「ごめんなさい」と謝った。そんな昴流の頭を、佐野君は優しく撫でた。

「ねーちゃんが心配で、守ろうとしたんだよな? 素直に謝れんの、偉いじゃん」

予想外の事に、昴流も私と同じように驚いている。

「そうだ。せっかくだし、連絡先交換しようぜ」

普通なら男の子と連絡交換なんて、言われてもなかなかしないのに、素直に頷いた。

「じゃ、俺行くわ。早く中入りな」

また明るく笑う佐野君に、改めてお礼を言って家に入った。

外からバイクの音がして、遠ざかって行く。

窓から小さくなる背中を見ながら、まだ少しドキドキする鼓動に手を当てていた。

翌日の放課後、私は今日も三ツ谷君の協力の元、部室の隅を借りている。

「わぁー、今日はオムライス? 美味しそーっ!」

「ちゃんとみんなの分あるからね」

部室で料理の練習をさせてもらう代わりに、こうして試食がてらにみんなに食べてもらっている。

仕上げをしていると、何やら廊下が騒がしい。

「ついに来たか……」

三ツ谷君の言葉を不思議に思いながら、出来上がった料理を並べていると、物凄い勢いで扉が開いた。

「三ツ谷ぁー、めっちゃくちゃいー匂いするっ!」

「おい、マイキーっ! 突然走り出してんじゃねぇよ」

開いた扉にいたのは、佐野君とそれを追いかけてきた奇抜な頭の、佐野君の友達だった。

「おー、もいたのかっ!」

当たり前のように笑顔で名前を呼ばれ、ドキリとした。

「オムライスじゃんっ! が作ったのかっ!?」

「あ、う、うん」

キラキラした目でオムライスを被りついて見ている。

「えっと……よかったら、佐野君も食べる?」

「いいのかっ!?」

更にキラキラした表情で、今度は私に近づいてくる。物凄く、顔が近い。

耳と尻尾が見える。

佐野君の前にオムライスとケチャップを置くと、真っ直ぐな視線が刺さる。

「なぁ、ケチャップでハート書いて」

「は、ハート?」

「おうっ! 書いてくれ」

ニコニコしながら私を見る佐野君の表情に、私はケチャップを手に取った。

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