第4章 海
『うわぁ、、海の家があんなに遠くに見える。
硝子、酔い潰れてないかなー。』
五条は泳ぐのをやめ、浮き輪に片腕を乗せてプカプカと浮いている。
「あいつはザルだからな。店のアルコールが底尽きるのが先だろ。」
『あはっ、確かに〜。』
時折チャプンと揺れる水音が心地良くて浮き輪に頭を預け目を閉じる。
「お前さぁ。ここで俺がいなくなったらどーすんの?」
『えーーー…五条はそんな薄情なヤツじゃないから大丈夫ー。』
「・・・なんだよソレ。
つーか…さっき砂浜んとこで傑と良い感じだったけど。
告ったのかよ?」
『えっ⁈見てたの⁇って、、わわっ、、‼︎』
思わずガバッと顔を上げたせいで浮き輪が大きく揺れ、落ちそうになった身体を五条が咄嗟に支えてくれた。
「っぶねー…何動揺してんだよ。」
『別に動揺したワケじゃ…。
・・・結局タイミング逃して告白は出来なかったんだよね。
良い雰囲気だったんだけどなぁ。』
「・・・・。」
急に黙りこくった五条は真顔になると、私の後ろの方に視線を向けた。
『え?何?どーかした?』
「ふーん…。脈、あんじゃねーの?」
『ーーーー脈?』
意味が分からず聞き返した。
「つーか邪魔もんは消えるわ。
俺は約束通り"空気読んだ"からな?」
五条はパッと浮き輪から手を離し、ザブンと水飛沫を上げて海中へと姿を消した。
『・・・・は?』
ポツン、と1人にされ、頭が真っ白になる。
嘘でしょーーーーーーー⁈⁈
またいつもの悪ふざけだよね⁇
真下とかにいて驚かすつもり、だよね⁇
キョロキョロと目を凝らして五条の姿を必死に探していると、
「っ、、」
声のした方に視線を向けると、
『傑っ⁈』
傑が華麗な泳ぎで近づいてくる。
た、、助かったーーーー‼︎‼︎
ホッと肩を撫で下ろした時、ふと以前に五条と話しをした事を思い出した。
"私、傑に告白するから。
そういうシチュエーションになったら空気を読んでよね?"
さっき、五条が言ってたのって…あの時の事だ。。。
だから気を遣って姿を消した…?