第1章 ムカつくアイツ。
『じゃあ傑もおやすみ〜!』
「あぁ、また明日。」
奥の部屋へと進む彼女の背中を見つめる。
少し自惚れていたのかもしれない。
出会ってすぐ、とは仲良くなった。
というより私に懐いた、と言った方が近いかもしれない。
口癖のように「付き合って。」という彼女に頷かなかったのは、別に女として見れない訳ではない。
天真爛漫で裏表のない性格は一緒にいて楽だし、むしろ居心地が良い。
そんな風に思えた異性はが初めてだった。
下手に手を出して男女の関係になり、いづれ関係が崩れるぐらいなら、今の関係のまま側に置いておきたい。
ーーーーそう思っていた。
けれど。
今日、悟とを見て、胸がざわついた。
今までが自分の知らない男と遊んだり、彼氏にするのは何とも思わなかったのに、何故か悟と距離を縮めるのは面白くない…
そう思ってしまった。
「・・自分がこんなに傲慢だったとはな。」
自嘲気味に笑い、自室のドアへと手を掛けた。
この悶々とした気持ちはきっと一時的なもの。
ーーそう自分に言い聞かせ、ベッドへ沈み込んだ。