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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第8章 Rose



「きゅう、に、心臓がいたんで、うごけなくなったの」


 荒い呼吸がローズの喉から溢れていく。
 どこか遠くから鐘を打ち鳴らすような音が聞こえてきた。それは煩わしくリヴァイの耳の奥で響き続ける。それが自分の心臓の音だと気づく。
 
 リヴァイは必死に呼吸を繰り返した。
 まずは、心を落ち着かせなければならない。ローズと話をするために。


「寝たら、きっと、よくなるから、大丈夫だよ」

「バカ言うな」

「ほんとう」

「今さら、誤魔化すんじゃねぇ」

「だって、」


 あなた、あたしより苦しそうな顔してるもの。

 囁いて、ローズの手がリヴァイの頬に触れた。
 唇を噛み締める。きつく目を閉じる。


「誰のせいだと」

「リヴァイ」


 目尻を撫でられ、リヴァイは目を開いた。視界は滲んでいた。涙はまだ、こぼれなかった。


「お願いがあるの」

「……なんだ」

「あたしを、連れて行って」

「どこへ」


 ローズの表情が優しくゆるむ。
 どこかを思い出し、彼女は穏やかな声で言った。


「あなたと初めて行った、あの花畑へ」




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