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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第7章 Odontoglossum



 コトコトと鍋の蓋が揺れる。パンの焼ける良い香りがする。ローズはシチューの味見をして満足気に頷いた。


「ただいま」


 器にシチューを入れていると控えめな声がした。
 顔を上げるとどこか気まずそうなリヴァイがいた。彼もまた喧嘩のことを気にしているのだ。


「おかえり」


 ローズは笑顔を作って言う。顔がこわばっているのが自分でもわかった。


「……この、花」


 ダイニングルームに入ってきたリヴァイはテーブルの上に置かれている鉢植えを目にして驚いたように呟いた。
 ローズはシチューの火を止めて頷いた。


「うん。綺麗でしょう? 買ってきたのよ」


 リヴァイは瞬きをすると、無意識で背中に回していた腕を前に出した。そこには同じ色の同じ花束が握られていた。
 ローズはしばらく言葉を失う。


「……リヴァイも同じ花を?」

「あぁ。ローズに、似合いそうだと思って……仲直り、したくて」


 最後の方はほとんど聞こえないほど小さな声だった。ローズは目を見開き、そして弾かれたように笑った。それはさっきまでのこわばったものではない。心からの笑顔だった。


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