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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第2章 Geranium



「でも、どうしてここに連れてきてくれたの?」


 よく日が浴びることのできる場所に座り、ローズは言った。
 その隣に並んで座り、問いの答えを探す。

 本音を言っても笑われないだろうか。馬鹿にされないだろうか。
 不安が頭をもたげたが、それより早くリヴァイは口を開いていた。


「……お前と仲良くなりたかった。ずっと何かに怯えてるみてぇだったから。少しでも、安心させられたらって」


 ローズは驚いたように目を見開き、すぐに笑った。手が伸びてリヴァイの頭は引き寄せられる。ぽすんっと彼女の胸の中に頭がおさまった。


「ありがとう。心配させてごめんなさい」

「ガキ扱いすんじゃねぇ」

「15歳はまだまだガキです」

「5歳しか違わねぇだろ」

「リヴァイが生まれた時、あたしはもう立っておしゃべりしてました〜」


 他愛もない会話が繰り広げられる。誰にも、何にも気を使わない話とはこんなにも楽しいものなのか。
 リヴァイは黙り、目を閉じた。ローズの心臓の鼓動がよく聞こえる。
 心の底から安心した。このまま眠っても構わないと思えるくらいに。


「……リヴァイ?」


 黙ってしまったリヴァイを不審に思ったのか、ローズが呼びかける。起きているという意思表示で身動きすれば、クスッと笑い声が聞こえた。


「あなたに怯えていたわけじゃないの」


 優しく、まるで壊れ物でも扱うかのような繊細さでローズはリヴァイの頭を撫でた。撫でられるのは母以外で初めてだ。


「地下街に来る前にいろんな人から嫌なことをされて、それでちょっと過敏になってるのよ。だからあなたが気に病むようなことではないの。……ごめんなさい」


 それ以上、ローズは何も言わなくなってしまった。
 人にされた嫌なことをリヴァイに話す気はないらしい。


「……いまは、俺がいる」


 風に吹かれ、花が揺れる。どれもリヴァイは見たことのない花ばかりだ。


「だから安心しろ」


 ローズが来てから、自分はおかしくなってしまったらしい。
 知り合って1ヶ月の人間にこんな言葉をかけるなんて。


「ありがとう」


 だが今は、この温もりを手放したくないと。そう強く思ってしまった。





 
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