第1章 消えたアイツ。-Side:Hakutaku-
薬を作れって言われたからわざわざきちんと納期に間に合うように作ってやったのに、予定の時間になってもアイツは来なかった。
徹夜しすぎてついにぶっ倒れたか?あんな仕事が生きがいみたいなワーカーホリックでも倒れることがあるんだな。
今まで来ないということが無かったから、仕方なく僕が届けてあげようと地獄にやってきた。
「いやぁ、僕ってばやさし~♪」
でも不思議なことに、アイツの部屋である場所にそれはなかった。
部屋を移動したのかと思い、ちょうど近くを通ったお香ちゃんにアイツの事を聞いた。
香「鬼灯……?聞いたことのない名前ねぇ。」
白「いやいや、いくらアイツが僕のこと嫌いだからって、そんなドッキリ今さらでしょ。」
香「いえ、ドッキリでも何でもないわ白澤様。そんな名前の方はここにはいないわ。」
白「え……」
そのときはまさかと思った。
でも、他の皆に聞いても…
唐「え?そんな人いたっけ…?」
茄「俺そんな名前聞いた事な~い」
唐「こらお前っ…!白澤様にタメ口とか失礼だろ!すみません……」
白「ううん、気にしなくていいよ~。ありがと。」
閻「う~ん……そんな子いたっけな~?」
白「知らない…か……」
閻「うん、ごめんね~」
白「いいえ、気にしないでください。」
やっぱり誰もアイツのことを覚えている人はいなかった。
正確に言えば、存在そのものが消されているようだった。
最初からアイツはいなかったかのように。