第5章 pendulum ペンデュラム
───百一年前
『魂魄消失事件…ですか』
霉李は平子に聞き返す
「せや、今ん所死神に被害はあれへんけど自分あんま戦えへんねんやから気いつけや」
『…わかりました』
いつもは藍染の隣、肩と腕が当たるほどの距離にいるのに、最近は妙に離れている霉李を見て忠告しながら喧嘩でもしたのかと気に止めることはなかった
『…惣右介』
「なんや心配なんか?」
藍染が厠へと席を外しぽろりと溢れ出たのに平子は目敏く気づく
『死神が襲われ始めたら、惣右介も危ないでしょ』
そう言って平子を見返す霉李の表情からは何も伺えない
「…そない心配せんでも惣右介は強いやろ、大丈夫や」
『惣右介のこと、すき?』
そっぽ向いて答えた平子に霉李ぽつりと聞いた
小さな幼子のような、迷い子のような、どこか不安そうな、少しでも他に人の声があれば聴き逃していたであろう小さな声で、そう聞いた
「…」
『…』
何も答えない平子
いっその事、好きじゃないと言ってくれた方がよかったのに
無言は肯定、そう受け止めれたならよかったのに
『…ひと、それぞれ、だもんね』
「っ霉李ちゃん…」
珍しく、敬語の外れた話し方
藍染の前でしかしない、話し方に平子は静かに目を見開いた
『少し、席を外します。惣右介に言っておいて下さい』
「…」
─
『ニセモノに全く気づかないんだね、平子真子』