第3章 【ちぇりーぱい_マス編】
中学時代、既に事務所に入っていたオレは、パッとしなかったに恋をした。
その時は何で好きになったのか、正直全くわかんなかったけど、今なら何となくわかる。
教室の隅っこで小さくなっていたのは、”転校生”だからだ。
既に出来上がっている友人関係に、入っていけなかっただけなんだ。
だけど、ホントはすごく明るくて、優しくて。
だから、オレはに恋をした。
告って、付き合って、この喫茶店でチェリーパイと紅茶を頼んで。
ほんの少しだけ満喫した青春も、徐々にオレの忙しさから疎遠になって。
1度きりのデートのあと、オレとはいわゆる”自然消滅”となった。
きっと悲しい想いをさせたんだろう。
後悔したこともあった。
だけど、彼女がオレとの思い出の味だと言ってくれたことで、オレの心が軽くなる。
”キレイになってやがる…。”
チェリーパイは再現出来なくても、喫茶店の新しいマスターとしてキラキラ輝いていた。
ポケットで震える携帯を取り出し、着信する。
電話の向こうでは、まだ来ないのかと友人が叫んでいた。
「うん、ごめん。もうちょっとしたら行く。」
あと少しだけ、この甘酸っぱい思い出に浸らせて。