第4章 手を引かれる
「ところで、何かあったんですか?」
離されたはずの腕がもう一度七海君によって掴まれ、グイっと再び引き寄せられる。
「…へ?…えっと、七海君…?」
突然の七海君の行動に、突然詰められた距離に思わず心臓がドクンドクンとうるさく音を上げる。
…七海君…ち、近い…
しかも、肌綺麗。髪サラサラ…
あまりの突然の事に、そんなどうでも良いことが頭を駆け巡る。
「顔、赤いですよ」
「え?いや、こんなに七海君と近かったら…赤くもなる…よ?」
「ぶつかる前から赤かったです」
その七海君の言葉に、この一連のハプニングで一瞬忘れかけていた記憶が再び私の頭を支配していき、さらに顔がカッと熱くなった。
「それに先ほど、悟の馬鹿というのも聞こえてきました」
「…ッ」
嘘、傑だけじゃなく七海君にまで聴こえていたなんて…恥ずかしすぎる!
「五条さんと何かあったんですか、こんなに顔が赤くなるほどの事が…」
七海君はそっと右手を持ち上げると、私の頬を親指でゆっくりと撫でた。
切長な瞳が私を真っ直ぐに見下ろす。思わずその視線に耐え切れず左右へ視線をうろうろさせてしまう。