第6章 デートの練習
でも私と五条先生はそれはない。別れの時が来れば二度とすれ違うこともなければ、話すことも会う事もない。生きながらの永遠のお別れだ。
私はきっと、毎週アプリで呪術廻戦を読んで、一方的に五条悟を見るのだろう。スマホの中で動く手のひらサイズの彼を。
五条先生は、私のことは知る由もないだろうから、そのうち忘れてしまうんじゃないかな。呪術界は今それどころじゃないしむしろこっちの世界の事なんて忘れてしまった方がいい。呪術廻戦という漫画の存在も。
でも、さっき彼は私にこう言った?――さみしいのは僕にも言えることだって。
それって今、この瞬間、私との永遠のお別れを想像して、二度と会えなくなる未来を思って、さみしいって感じてくれたってこと? だから恋愛感情は困るってそう私に言ったの?
いろいろ考え出したら止まらなくて、頭の中が混沌としてくる。だけどこれははっきり言って考えるだけ無駄だ。時間の浪費に違いない。
私は五条先生に元の世界に戻ってほしくて、呪術師として生きてほしくて協力してるし、今日だってそのために渋谷に来ている。つまり永遠のお別れのために、私と五条先生は一緒にいるのだ。
こちらの世界にいても、五条先生は本来の生き方が出来ないし夢を叶えられない。
仲間たちを置いて呪術界を捨てて、ひとりだけこっちで楽しく生きるなんてきっと彼は出来ない。
私だって、五条悟が二度と呪術廻戦に出てこないなんて、作品のファンとして悲しいし幸せでもなんでもない。
こういう時、何度も何度も自分に言い聞かせている。五条先生は二次元で私は三次元で、どんなに相手に近付いても同一線上に交わる未来はないのだと。