第2章 出会い
ざわざわと声が聞こえる。先程よりも気配を多く感じる。知らない気配だ。船を漕いでいた状態から無理矢理思考をして目を覚ませば、私の視界は緑に染まっていた。
狩衣の中にいるということを思い出して、もぞもぞと狩衣から顔を出せば、薄い黄緑の髪を持った少年と目が合った。やばいと思ったのは同時だった。
「ふぎゃー!!」
よりにもよって狩衣から顔を出したら毛利くんと目と目が合うなんて思ってなかった。目をハートにさせてハァハァと息をするやばいひとに、思わずドン引く。普通の子どもなら気にしないかもしれないが、精神年齢は20後半だ。気にしない方が無理だ。
石切丸の狩衣から出てキョロキョロと辺りを見渡すと、大勢の刀剣男士が集まっていた。夕餉だろうか。
私に抱きつく毛利くんをいないものとして、辺りを観察するようにみれば、じんわりと広がっていく不快感があった。
「おもい」
呟いた声は石切丸と毛利くんに聞こえたらしい。毛利くんは抱きしめる力を弱めながら、私に自分の体重がいかないようにしてくれてるが、そういうことじゃない。
ちらりと石切丸をみれば、冷たい目で広間全体を見つめていた。恐らく私の呟きの意味を彼は理解しているのだろう。直ぐに目を逸らして、ぼんやりと過ごしていれば夕餉が運び込まれてくる。
ああ、この本丸はバイキング方式か。
ぐぅとお腹が鳴った。鳴ったのを隠すようにお腹に力を込めて、無理矢理手のひらで押せば毛利くんに手を絡み取られた。
「ご飯食べましょ!」
「……わたしはいい」
軽く首を横に振り、毛利くんにご飯を食べてくるように促す。神様のご飯を食べたいが食べたら何が起きるかわからない。中途半端に神様への知識があるから、余計に食べられない。そもそも、本丸そのものが神域みたいなものだ。食べていいのはここの主だけだ。
帰らなくちゃいけないのに。体が、心が、帰りたくないと告げている。家に帰ったらまた理不尽に怒られる。母と過ごす苦痛が幼い体にのしかかる。
目の前がどんどん暗くなる。苦しい。苦しいのは何で。私は。今。何を。
「大丈夫。ゆっくり深呼吸してごらん」
繰り返し小さく息をしていたのが、背中に触れる大きな手の熱で呼吸が正しくなる。また無呼吸と過呼吸を繰り返していたのか。小さく嘲笑うようにため息をついて、石切丸にお礼を告げれば石切丸は困ったように微笑んだ。
