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お隣さんはブラック本丸

第2章 出会い


 降ろされたのは庭を一望できる縁側。右端に映るのは橋のかかった大きな池と桜の木。真正面の少し奥まった丘の上には、恐らくイチョウの木。美しいと言えば美しいが物足りないと言えば物足りない。
 まぁ所詮、庭なんぞ景趣で変えられるからどうにでもなると思うが。なんて口には出さずソワソワと落ち着かない様子でキョロキョロと眺める。

「石切丸」
「おや、三日月」

 天下五剣の声が聞こえる。現実逃避したい気持ちを抑えて、横目で姿を確認すれば戦闘服姿の三日月宗近がいた。石切丸と小さな声で話している声は聞こえない。いや、こういうのは聞かない方がいい。私は普通ではないから。
 石切丸と三日月を盗み見ても、相手はやはり手練れ。少しの視線にでも気づく。パチリと視線があったと思えば、穏やかに微笑まられた。

「あぁ。紹介が遅れたね。隣に越してきた苗字さんの娘さん。挨拶回りに来てくれたようだよ」
「ほう。よく参られた。何も無いがゆっくりしていくといい」

 私と目を合わせるように三日月はしゃがみ込んだ。軽くお辞儀をすれば良いものを、何を思ったのか私は無意識に三日月に近寄り、三日月の右頬の横を掴んだ。何も無い空間を。
 暫しの沈黙のあと。お嬢さんと呼ぶ石切丸の声が耳に届き、ハッと意識を取り戻した。目の前には不思議そうに私を見つめる三日月の顔があって、思わず後退り石切丸を盾にした。

「おや……」
「はっはっはっ。面白いお嬢さんだな」

 別に人見知りという訳では無い。臆病なだけだ。今まで画面越しにしか見てこなかったのが目の前にいて混乱してるだけだ。とりあえずお辞儀はしとこうと小さく頭を下げれば、頭を優しく撫でられた。
 石切丸を盾にするのをやめて、縁側に足跡がつかないように膝歩きをして縁側から庭におりる。長居してしまうと迷惑になるし、恐らく母に怒られる。
 石切丸と三日月の方を振り向けば、またじんわりと違和感が背筋を通っていく。

「どうかしたのかい?」
「おもい」

 庭を全体的に見渡しながらポツリと呟いて眉間に皺を寄せる。気持ち悪い訳ではない。物理的に重い訳でもない。ただ何となくおもいと感じただけ。
 何かを隠している気がするのは何となくの勘。けれど、踏み込みはしない。これは私には関係の無いことだ。石切丸と三日月に向き合って遅くなる前に帰る旨を伝えれば、彼等は門前まで送ってくれた。
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