第6章 平行世界
卒業式の祝いはお隣さんにやられ、中学の入学式のお祝いもお隣さんにやられた。訳が分からないまま時が過ぎるのだけを待っていたのが懐かしい。
入学式が終わって1ヶ月後、母と父が再婚した。流されるまま再び同居が始まり、弟には会って早々抱きつかれた。シスコン度合いが増している。
相変わらず母が嫌いなので、なるべく遅くに帰るようにと部活に入った。と言っても、イラスト部だからお喋り会なんだけど。
「君は少し学ぶことを覚えようね」
「ハイ……スイマセン……」
逢魔時も過ぎて安心しきっていた時間帯に、時間遡行軍に襲われた。たまたま石切丸が近くにいたため、事なきを得たが石切丸がいなかったらどうなっていたかは分からない。
時間遡行軍とは初めて遭遇したあの日から、よく襲われるようになった。遡行軍が現れることに慣れてしまい、そのまま眺めていたら石切丸に怒られて今に至る結果だ。
「誰かを呼びなさい」
「……」
「いいね」
?マークがないのはお姉さんの気のせいでしょうか。
なんて口が裂けても言えない。ちらりと見上げた石切丸の目元は一切光が宿ってなく、笑っていない。口角だけが笑っている状態だ。そんな時に変な事を言うバカはいない。
足の遅い石切丸と歩いて家へと向かう。身長も伸びたが、石切丸が相変わらず巨人のため身長差はまだ大分ある。
これでも伸びた方だと思ったが、所詮体の成長は前の世界と変わらない。つまりは小さいままだ。
「学舎は楽しいかい?」
「ん〜……うん」
「……そっか」
私の曖昧な返事をどう受け取ったのかは知らないが、石切丸が特に深く聞いてくることは無かった。いじめられてるなんて言ったら過保護な神様達が何をするかわからないから、何も知らないふりをするのが一番いい。
暗い夜道を歩いていると、本丸と家が見えてきた。家の前に誰かいる。父親ほど大きくなければ母ほど低くもない誰か。
誰だと目を凝らしながら見つめていると、近づくにつれて見えてきた色が誰かを教えてくれる。
「肥前」
「……かえり……」
小さな声でおかえりの言葉を告げた肥前に、思わず笑みが浮かび上がる。石切丸と目を合わせて肥前に向かい合えば、肥前の眉間に皺が寄った。
「ただいま」