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【鬼滅の刃】屋烏之愛【新装版】

第5章 素直 中編【※錆兎】





森の奥、切り立った崖に出来た洞窟。


その死臭に塗れた洞窟の中、二匹の鬼がいた。一匹は奥の一つ高い岩場に座り込み、もう一匹は恭しく、傅くようにその鬼にひれ伏していた。

「そうか、また鬼刈りどもが舞い込んできたか?」

そう言って、岩場の鬼は静かに顔を上げた。褐色の肌に黒髪、するどい黒い眼光を持ったその鬼は、部下のような鬼に視線を向けた。

「はい、樹忌(いつき)様。鬼刈りが二人です。」

その部下の鬼の言葉に、黒髪の鬼は、ゆっくりと目を閉じた。

すると、遠くにいるはずの鬼刈り達の姿が見えているかような口振りで、喋りだした。

「……なるほどな、こいつらか。男は…柱だな。もう一人は…女か。こいつは、柱ではなさそうだ。」

「どうなさいますか?」

そう問いかけられ、黒髪の鬼はニヤッと笑った。

「お前は、男の方に行け。」

「え?しかし、向こうは柱…、」

言いかけた下僕の鬼は、目の前の鬼の眼光に射抜かれ、恐怖のあまり、言葉を止めた。

「か、畏まりました。」

そう言って、下っ端の鬼は慌てて、洞窟から出ていった。

あとに残された黒髪の鬼は、暗い洞窟内を見つめた。

(いくら俺でも、柱は折れる。だが…この女を、使えばいい。)



そして、その鬼はニヤッと笑った。



その瞳には、数字が刻まれていた。







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